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わくわく着物~着物の愉しみ~ 臥竜亭へようこそ!

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『桜姫東文章』

■ □■『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』■□■

 スペクタクルで波瀾万丈、荒唐無稽もここにきわまれり、という演目。でも、いや、だからこそ、ワタクシ、一番好きな芝居です。今を去ること十数年前、「孝・玉コンビ」とうたわれた片岡孝夫(現・仁左衛門)・坂東玉三郎の超! 当たり役。当時テレビでも繰り返し放送されたので、見た方も多いのでは? ストーリーはと申しますと…。

 春まだ浅い江ノ島の、海を見下ろす稚児ヶ淵。おぼろに浮かぶ影二つ(ベベン、ベン)。長谷寺の僧・清玄と稚児の白菊丸は恋仲となり、寺に知られた二人は心中しようとするのですが、白菊丸だけが入水し、清玄は生き残ってしまいます。
 それから十七年後。清玄は心中未遂以来修行に励み、今では偉いお坊さんになって、人々にあがめられています。そんなある日、清玄は寺を訪れた吉田家の息女・桜姫が白菊丸の生まれ変わりと知って恐れおののきます。
 桜姫は、京の公家、吉田少将惟貞の息女ですが、お家乗っ取りをたくらむ悪臣に、父と末弟を殺された上、家宝・都鳥という巻物を奪われ、それを奪い返すために、もう一人の弟・松若丸も旅の最中、という不幸の身の上。桜姫は清玄に出家させて欲しいと頼みます。
 剃髪を待つ間、ひょんなことから桜姫は、ちょうど一年前、自分を手込めにして子を産ませた権助と密会しますが、その現場を見つかってしまい、素早く逃げ出した権助のかわりに、運命と観念して罪をかぶった清玄共々寺から追放され、さらし者に。清玄は桜姫への愛を打ちあけますが、桜姫は権助を追いかけ、逃げて行ってしまいます。
 その後すったもんだがあったあげく、権助の女房になった桜姫は、女郎屋に売り飛ばされ、「風鈴お姫」と異名をとる売れっ子となりますが、殺された清玄の幽霊が枕元に立つので、権助の元に返されてきます。そこに現れた清玄の幽霊から、権助が拾った子は桜姫の産んだ子であると教えられ、さらに酔った権助から吉田少将を殺害し家宝を奪ったのは自分だと聞いた桜姫は、子と権助を殺して仇討ちを果たし、家宝も取り返し、吉田家の再興もかない、桜姫初め駆けつけた松若や家臣達は喜び合うのだった…。

 というお話なのですが、いやもうとにかく話が入り組んでいて、今時少女小説だって、もう少しリアリティあるぜ、というくらい次から次へと「実は」「実は」の因縁の連続です。だってこのお話の作者は鶴屋南北。そう、あの「四谷怪談」を書いた人ですから、ドラマティックなのも頷けようというもんです。筋だてを追う、というよりとにかく舞台が満艦飾で豪華絢爛な上、役者さんがキレイなので(人にも寄りますが^^;)、そちらを楽しんで下さいね。
 私が見たのは、桜姫に玉三郎、権助に孝夫で、それはそれは美しい舞台でした。玉三郎の魅力は桜姫にとどめを刺すし、孝夫の色悪、男の色気があって、イイんですよ(#^^#)。
 玉三郎さんって、表面はすごく澄んだ、けれど深さの計り知れない、静かな湖、というのが私のイメージです。底が知れない、というか、どんなモノが潜んでいるか見えない感じ。龍が住んでいるかもしれないし、魚一匹いないかもしれない…。これは私が見た「玉三郎」で、ご本人のお人柄には全然関わりがありませんので、念のため。こうあってほしい玉三郎、かも(笑)。
 で、それがすごく桜姫のイメージにかぶるのです。「公家のお姫様から裏町の安女郎にまで転落する数奇な運命」で「惚れた男をひたすら恋い慕う、初で一途な姫君」的な言われ方をする桜姫ですが、本当にそうかー? 自分に乱暴をはたらいた、顔も分からぬ暴漢を忘れかね、その二の腕にあった釣鐘を自分も彫ってみたり、女郎の暮らしにもすっかり順応したり、かと思うと、「父の仇!」とつい今の今まで睦んでいた男や我が子まで手にかけて、お家再興を無邪気に喜んだりするお姫様なワケでしょう。その、清濁あわせのんで、最後の最後には元のお姫様に収まってしまい、凛と静かに美しい様が、『やっぱ、桜姫ってば玉三郎…うっとり』とワタクシなるのです(#^^#)。
 演目にも流行廃りがあるようで、近頃あまりかからなくなってしまいました。そして今は昔、「孝・玉コンビ」とうたわれた片岡孝夫さんも現・仁左衛門となり、玉三郎さんとあまりコンビを組まなくなりました。寂しい…。
 せっかくなので、着物で歌舞伎としゃれ込みましょう!『桜姫東文章』、絢爛豪華な舞台だし、桜が随所に出てきます。主人公も「桜姫」だし、というワケで、白地に桜の明るい帯に、しだれ桜の帯留を合わせた、桜尽くしのコーディネートで。春の演目なので、着物も桜の柄など、ぱっと晴れやかにしてしまうのが気分です。

桜姫東文章・白帯


桜姫東文章・帯留




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